監修宅地建物取引士 松本 宗一(横浜不動産再生パートナーズ 代表取締役)
土地や家の持ち主になりすまして、勝手に売却し、代金をだまし取る――いわゆる「地面師(じめんし)」による詐欺は、2026年に入ってからも事件の報道が続いています。大きな事件では都心の一等地が狙われますが、実は空き家や、相続したまま名義を変えていない土地のように「持ち主の目が届きにくい不動産」も狙われやすいといわれています。この記事では、地面師の手口と、持ち主が今日からできる対策を解説します。
結論:「持ち主が気づきにくい不動産」ほど狙われる
地面師は、本物の持ち主がすぐには気づかないことを前提に動きます。長く空き家になっている、持ち主が遠方や施設に住んでいる、亡くなった方の名義のまま、といった不動産は、なりすましに気づくのが遅れがちです。逆にいえば、登記を最新の状態にしておくことと、定期的に様子を見ることが一番の守りになります。
地面師とは?よくある手口
地面師は、ひとりではなくグループで動くのが一般的です。持ち主になりすます役、偽の書類を用意する役、買い手を探す役などに分かれ、本物の取引のように見せかけます。
1. 狙う土地を探す
空き家・持ち主が高齢や遠方・名義が古いままの土地など
2. 持ち主になりすます
偽造した身分証明書・印鑑証明書・権利証などを用意し、別人が持ち主を名乗る
3. 買い手と契約する
相場より安い・急ぎの売却などを理由に、確認の時間を与えずに契約を進める
4. 代金を受け取って消える
本物の持ち主も、お金を払った買い手も、大きなトラブルに巻き込まれる
実際に、2026年2月には東京・新橋駅前の土地の売買をめぐり、持ち主になりすますなどして約3億円をだまし取った疑いで、不動産会社の社長らが逮捕されたと報じられました。ほかにも、土地の持ち主や不動産会社の社員になりすまして、現金をだまし取ろうとしたとして逮捕された事件があります。不動産の取引に慣れた人や会社でも、だまされることがあるのが地面師の怖いところです。
狙われやすい不動産の特徴
- 長く空き家になっている家・土地:人の出入りがなく、勝手に内見や測量をされても気づかれにくい
- 相続したまま名義を変えていない不動産:登記上の持ち主がすでに亡くなっていて、本人確認の目が届きにくい
- 持ち主が遠方・施設・入院中:現地に来ることがなく、近所の人も持ち主の顔を知らない
- 登記の住所が古いまま:法務局や関係者からの連絡が、今の持ち主に届かない
- 住宅ローンなどの担保がついていない:金融機関が関わっていないため、売却の動きに気づく人がいない
持ち主ができる5つの対策
1. 相続登記を済ませておく
亡くなった方の名義のままになっている不動産は、狙われやすいだけでなく、トラブルが起きたときに誰が持ち主なのかを示すのにも時間がかかります。相続登記は2024年4月から義務になっていて、相続を知った日から3年以内に申請が必要です。
2. 登記の住所・氏名を最新にしておく
また、2026年4月1日から引っ越しなどで住所や氏名が変わったときの変更登記も義務になりました(変更から2年以内)。登記の住所が今の住所になっていれば、法務局からの通知などが本人に届きます。法務局に生年月日などの「検索用情報」を申し出ておくと、住所が変わったときに法務局が職権で変更登記をしてくれる仕組みもあります。
3. 権利証(登記識別情報)・実印・印鑑カードをきちんと保管する
権利証や登記識別情報、実印、印鑑登録カードは、なりすましに悪用されやすい書類です。家族にも保管場所を共有しておき、空き家に置きっぱなしにしないようにしましょう。万が一なくしたり盗まれたりした場合は、警察への届け出に加え、管轄の法務局に「不正登記防止申出」をする方法があります。申し出から3か月以内にその不動産の登記の申請があると、法務局から知らせてもらえます。手続きの条件や必要なものは、管轄の法務局で確認してください。
4. 定期的に現地を見に行き、登記を確認する
空き家や土地は、月に一度でも様子を見に行くだけで、見知らぬ人の出入りや測量の跡などに気づきやすくなります。近所の方に連絡先を伝えておくのも有効です。また、ときどき登記事項証明書(登記簿)を取って、持ち主の名前や担保に変化がないかを確認すると安心です。2026年2月からは、自分の名義の不動産を一覧にした証明書を法務局で請求できる「所有不動産記録証明制度」も始まっています。
5. 使わない不動産は、早めに方針を決める
「いつか考えよう」と放っておく期間が長いほど、狙われるリスクも、建物の傷みや固定資産税の負担も大きくなります。売る、貸す、管理を任せる、家族で持ち続けるなど、方針を決めておくだけでも、不動産に人の目が届くようになります。
買う側・取引する側が気をつけたいこと
地面師の被害は、持ち主だけでなく、お金を払った買い手にも及びます。次のような話には特に注意が必要です。
- 相場よりかなり安い、または「今日中に決めてほしい」と急がされる
- 売主本人が現地の様子や近所のことをよく知らない
- 代金の振込先が売主本人の名義ではない
- 直前になって、売主や仲介する会社が入れ替わる
少しでもおかしいと感じたら、その場で決めずに、宅建業者や司法書士など別の専門家に確認し直すことが大切です。
まとめ
- 地面師は、持ち主になりすまして不動産を売り、代金をだまし取る詐欺グループ
- 空き家、相続したまま名義を変えていない土地、持ち主が遠方の不動産は狙われやすい
- 相続登記と住所変更登記を済ませ、登記を最新の状態にしておくことが基本の守り
- 権利証・実印は大切に保管し、なくしたら警察と法務局(不正登記防止申出)へ
- 使わない不動産は、早めに売る・貸す・管理するなどの方針を決める
空き家や相続した不動産をどうするか迷っている方は、横浜不動産再生パートナーズにご相談ください。必要に応じて司法書士とも連携し、登記の確認から売却・管理の方針まで一緒に考えます。ご相談は無料、秘密厳守です。