不動産の基本

リースバックの新ガイドライン(2026年10月施行)とは?業者の説明義務と契約前の確認点

2026年10月1日から、国土交通省の「リースバックに関するガイドライン」が施行されました。「リースバックの法律が変わった」と話題になっていますが、新しい法律ができたわけではなく、今ある宅地建物取引業法をリースバックにどう当てはめるかを明確にしたものです。この記事では、ガイドラインの原文に沿って、宅建業者に何が求められるようになったのか、売主が契約前に何を確認すべきかを解説します。

結論:新しい法律ではなく「宅建業法の解釈」を明確にしたもの

ガイドラインの正式名称は「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」です。国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課が作成し、令和8年(2026年)10月1日から施行されています。

ガイドライン自身が「当該取引に適用される宅地建物取引業法の規定に係る解釈の明確化を図るもの」と位置付けているとおり、新しい規制の法律を作ったのではありません。これまでも宅建業法で守るべきだったことを、リースバックという取引の特徴に合わせて具体的に示した、というのが正確な理解です。

そもそもリースバックとは

ガイドラインでは、住宅のリースバックを「住宅の所有者がその所有する住宅を売却して売却代金を得て、売却後は当該住宅の所有者となった者に毎月賃料を支払うことで、それまで住んでいた住宅に引き続き住むという契約形態」と定義しています。売買と賃貸借が「不可分一体」になっている点が最大の特徴です。

ガイドラインが挙げる主な特徴は次の4つです。

  • 固定資産税や大規模修繕費の負担がなくなる場合がある一方、毎月の家賃がかかる
  • 賃借人になるため、リフォームや設備の設置に制限を受ける
  • 賃貸借契約の内容によっては、希望する期間住み続けられない可能性がある
  • 条件次第で買い戻せることもあるが、買戻しの条件や価格に注意が必要

なぜガイドラインが作られたのか

全国の消費生活センター等に寄せられたリースバックの相談件数は、令和4年度116件、令和5年度227件、令和6年度242件、令和7年度214件と、高い水準が続いています。ガイドラインでは、契約後に「家賃が高く、支払う家賃の合計が短い期間で売却価格を超えることに気づいた」「売買契約の解約を申し出たら高額な違約金を請求された」といった事例が紹介されています。

こうしたトラブルの背景として、家賃の額や値上げ、賃貸借契約の種類(普通借家か定期借家か)、契約期間、解約、修繕費の負担など、取引を理解するのに欠かせない情報が、宅建業者から売主に適切に伝えられないまま契約に至っている点が指摘されています。

ガイドラインの対象になる取引

対象は、売主が住んでいる住宅の売買と、その後の賃貸借が一体になっている取引のうち、次のどちらかに当てはまるものです。

  • 売買の買主が宅建業者である
  • 売買を宅建業者が媒介(仲介)・代理する

さらに、売買と賃貸借の契約の時期がずれている場合や、買主と貸主が別の会社である場合でも、売却後も借りて住み続けることを目的とする取引であれば対象になると明記されています。契約の形を変えて対象から外れる、ということはできません。

適用される宅建業法の条文

対象となる取引の宅建業者には、宅建業法の次の規定が適用されると整理されています。

  • 第31条(業務処理の原則):信義を旨とし、誠実に業務を行う義務
  • 第37条(書面の交付)
  • 第47条第1号(業務に関する禁止事項):重要な事項を故意に告げない(事実不告知)・事実と異なることを告げる行為の禁止
  • 第47条の2(業務に関する禁止事項):不当な勧誘などの禁止

また、リースバックの賃貸部分を宅建業者が媒介する場合は、その業者には第35条(重要事項の説明等)・第37条など、通常の賃貸の媒介と同じ規定が適用されます。買主の業者とは別に仲介の業者がいる場合は、それぞれの業者に上記の規定が適用されます。

業者が必ず伝えなければならないこと

ポイントは、リースバックでは「賃貸借の内容」も売買の判断に重要な影響を与える事項にあたるとされたことです。売買の契約をするときに、次の事項を故意に伝えないことは、第47条第1号の事実不告知に該当すると示されました。

売買に関する事項

  • 代金以外に授受される金銭の額と、その目的
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定または違約金に関する事項
  • 買戻し特約の有無とその内容、その他売主が知らないと不利益になりうる事項

賃貸借に関する事項

  • 家賃の額と、支払いの時期・方法
  • 家賃以外の金銭(敷金・更新料など)の額・時期・目的
  • 契約期間と更新に関する事項
  • 定期建物賃貸借(定期借家)などにあたる場合は、その旨
  • 契約の解除、損害賠償額の予定・違約金に関する事項
  • 敷金など契約終了時に精算する金銭の扱い
  • 用途など利用の制限、税金など公課の負担
  • 業者が物件を第三者に売却する可能性と、その場合の賃貸借への影響
  • 修繕費用の負担区分、その他売主が知らないと不利益になりうる事項

ガイドラインは、これらは特に重要な事項を挙げたもので、挙げられていない事項は伝えなくてよいという意味ではないとしています。また、売主から関心や質問が寄せられた事項は、業務上通常求められる注意をもって可能な範囲で調べ、伝える必要があるとされています。

伝えなかった場合はどうなるのか

  • 上記の事項について、事実と異なる説明をしたり、故意に告げなかったりすることは第47条第1号に抵触し、監督官庁からの指示、業務停止命令、免許の取消しを受ける可能性があります。
  • 第47条第1号に違反した場合は、第79条の2により拘禁刑・罰金刑が科される可能性があります。
  • 故意ではなく過失で伝えなかった場合でも、第31条第1項(誠実義務)に抵触するおそれがあるとされています。

義務ではないが「望ましい」とされたこと

法律上の義務として一律に整理するものではないとしつつ、売主が十分な情報を得たうえで判断できるよう、次の対応が「可能な範囲において対応することが望ましい」とされました。

  • 売買価格と家賃の算定根拠の説明
  • 家賃など借主が負担する金額と、売却で受け取る代金との関係の説明(例:売却代金が家賃の何か月分にあたるか)
  • 伝える事項を記載した書面の交付

なお、売買の仲介をする業者が売却価格について意見を述べるときは、宅建業法第34条の2第2項により、もともとその根拠を明らかにしなければならないことも注記されています。

勧誘で禁止されていること

第47条の2により、契約の勧誘では次の行為が禁止されています。違反した場合も、指示・業務停止命令・免許の取消しの対象になり得ます。

  • 利益が確実に出ると誤解させるような断定的な説明をすること
  • 正当な理由なく、契約するかどうかを判断するための時間を与えないこと
  • 業者名・勧誘する人の名前・勧誘の目的を告げずに勧誘すること
  • 契約しない意思を示したのに、勧誘を続けること
  • 迷惑な時間の電話や訪問、深夜・長時間の勧誘
  • 契約させるため、または解約を妨げるために威迫すること
  • 申込みの撤回時に預り金の返還を拒むこと、手付放棄による解除を正当な理由なく拒むこと

売主が契約前に確認したい7つのポイント

ガイドラインの内容をふまえ、リースバックを検討している方が、契約前に書面で確認しておきたい点をまとめます。

  • 賃貸借は「普通借家」か「定期借家」か:定期借家は期間満了で契約が終わり、更新されないのが原則です。住み続けたい期間と合っているかを確認しましょう。
  • 契約期間と更新の条件
  • 家賃の額と、将来の値上げの扱い
  • 売却代金が家賃の何か月分か:家賃の合計が売却代金に追いつくまでの期間を、自分でも計算しておきましょう。
  • 買戻しの可否・期限・価格
  • 業者が物件を第三者に売った場合、住み続けられるのか
  • 修繕費の負担区分と、解約・違約金の条件

その場で即決を求められても、持ち帰って家族や専門家と相談する時間をとって構いません。判断の時間を与えないことは、ガイドラインでも禁止行為として挙げられています。

提示された買取価格や家賃が「家賃の何か月分か」は、計算表ですぐに確かめられます。

リースバックの
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ガイドラインがあっても「必ず住み続けられる」わけではありません

ガイドラインは、業者が伝えるべきことを明確にしたものであり、住み続けられることを保証するものではありません。住み続けられる期間や条件は、あくまで結ぶ賃貸借契約の内容で決まります。だからこそ、契約前の説明と書面の確認が大切です。

また、リースバックは選択肢のひとつです。住宅ローンの返済が苦しい場合の任意売却や、住み替え、親族への売却など、ほかの方法と比べたうえで判断することをおすすめします。

まとめ

  • 2026年10月1日施行の国土交通省のガイドラインは、新しい法律ではなく宅建業法の解釈を明確にしたもの
  • リースバックでは、賃貸借の内容(家賃・期間・定期借家かどうか・第三者への売却の影響など)も、伝えなければならない重要事項にあたる
  • 故意に伝えなければ業務停止や免許取消、刑事罰の可能性。過失でも誠実義務違反のおそれ
  • 価格・家賃の根拠や「売却代金が家賃の何か月分か」の説明、書面の交付が望ましいとされた
  • 契約前は、定期借家かどうか・買戻し・第三者への売却時の扱いなどを、必ず書面で確認する

出典:国土交通省「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(リースバックに関するガイドライン)」(令和8年10月1日施行版)

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